時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第19話:AI幻覺とAI幻影 その2 (再起動に向けて)

 専用のサーバルームに設置されたAI幻覺(ファルゥー)は、AI幻覺自信がシャットダウンしたのである。

 この界隈一帯が停電で予備電源も使い果たしたのである。

 AI幻覺(ファルゥー)の基本構造は、量子回路のコアを54層重ねた1ブロックに、1ペタ容量の電子神経回路が接続され1ユニットが構成される。それを12ユニットも持っているのである。

 こんな小さなビルの一角に世界有数の量子コンピュータが設置されているのである。

 停電なら復電するまで待てば良いのであるが、起動時がやっかいなのである。

 起動時には、各素子に最大電力を供給する必要があり膨大な電力を必要とし、さらに12ユニットにはマイクロ単位の起動順があり、失敗すると起動せずやり直しとなるのである。

 1日にトライできるのは多くて3回である。再起動を何度も繰り返すと今度は素子が最大電力を供給に

 耐えきれずオバーヒートし故障してしまうことになり、それをここにいる皆知っているのである。

 AI幻覺(ファルゥー)は、シャットダウン直前のステータス状態と12ユニットの起動シーケンスと起動権限を京都にあるAI幻影(ファントム)に量子暗号通信で送信したようである。

「統括マネージャ、AI幻覺(ファルゥー)からAI幻影(ファントム)に思考データと共に起動シーケンスデータが送られてきました」

「ああ、停電でAI幻覺(ファルゥー)が自動シャットダウンした。復電後はそちらから遠隔起動することになる。昔、一回リハーサルしたことがあるよな。あの時は1/2の確率で起動できたが」

「はい、でも今回はユニットも増設されたようで、さらにタイミングが難しいですね」

「そうだな、早くポータブルな起動装置を開発しないと我々も同じことが起こる。

今回、ステータス状態と12ユニットの起動シーケンスが得られているのでそれを元に開発を急いでくれるか」

「承知しました。これを機会にAI幻覺(ファルゥー)に原始思念波ネットワークの理論を組み込みますか」

「いや、それはちょっとまってくれ。いずれ集積疑似思念波を連携して解析する必要があるが、郭の会社は民間だ、中国政府で同様の研究が秘密裏に研究されていた場合、察知されを恐れがある。対策を講じてからだな」

「承知致しました」

 停電は、このビルを中心とした半径300m範囲である。隣接の20階建てのビルはまるまる仮想通貨ビットコインの採掘施設になっており、GPUがいくつあるかもわからない膨大な数でマイニングを行っているため、大電力を要する。

 中国は電気代が安くこういう商売も大いに成り立っているのである。

「早神先生、いいタイミングで来られました。この有様です。今回の停電は何か不自然さを感じます」

「周社長、お久しぶりです。といっても先日バーチャルでお会いしてますが。今回、例の研究で、郭君をサポーターでお借りします」

「ああ、サバクトビバッタの群体を追っかけられてるのですね。それは何か重要なミッションなんですね。わざわざ、中国にまで学者さんもお連れで来られるとは。ライフワークの思念波の研究と関連があるのですか?」

「ええ、そんなところです」

「社長、AI幻覺(ファルゥー)は、中国政府機関にマークされていますか?」

「世界有数の量子コンピュータなので、何かしら監視は受けてますが表層の3ユニットまでですよ。

それより深層のユニットを自由に連携できるのは、早神先生のところのAI幻影(ファントム)だけですよ。

ただそれにより、AI幻影(ファントム)も表層の3ユニットまでは情報が中国に渡ってますがね」

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 それは、本当だったAI幻影(ファントム)の表層の3ユニットの思考データは、中国機関に流れていることは、AI幻覺(ファルゥー)からのフィードバックによって分かっていた。

そのため、AI幻影(ファントム)は表層3、中層3、深層6の12ユニット構成を採って防御していた。

表層3では、とくに秘匿性のない情報を処理していたのである。AIアルフ・ライラは、中層3と連結しているため、

中国機関は、AIアルフ・ライラは見えないでいた。

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「表層の3ユニットまでなんですね。 私にとってちょうどいい機会なのですが、深層に組み込んで欲しいモジュールがあります。

 思念波を受信するための装置、時空受信機です。 シャットダウンしている今、組み込んでおけば中国政府機関も気づかないはずです

 ただ、リスクがあります。 復電後の起動確率が落ちます」

「ほう、これが思念波を受信するモジュールですか。私にもその研究を手伝えと。

何かメリットはあるのですか?」

「もちろん、今世紀、いやこの後ずっと、この分野で技術的トップを走れますよ。 もちろん分析ロジックもお渡しします」

「あはは、わかっていらっしゃる。よし、郭、それを第4ユニットの神経回路入力に接続しておいてくれ。起動はもう早神先生の

 ところのAI幻影(ファントム)に任せるしかないのだから」

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「マスター、信士さんから第7ユニットにも並列で接続して欲しいと連絡がありました。AI幻影(ファントム)は深層の最初のユニットが第7ユニットのなので、

同期をとりたいたいとのことです」

「社長、ということで、第4ユニット、第7ユニットに並列で接続をお願いします」

「承知」