いかに優秀な人工知能であるAIアルフ・ライラだけの解析を持ってしても、『迷いの森』のような
完全未知な時空位相世界をゼロ知識から推測・理解することは無理なことである。
理解するには、今回取得できたの時空位相世界のデータに特殊な共感覚を認知できる情報を加える必要がある。
この世界には特殊な共感覚を持っている人間が一定数存在する。
それは文字に色が見えたり、時間が点と線のように不連続な形に認知できたりと多種あり、これらの認知情報は未だに詳細にはわかっていない。
未来世でこの特殊な共感覚を発揮したのは部下の設楽信士である。
信士は、時空間に色と記号が同時に認知できた。信士から説明を受けても、俺にはその認知情報はどのような感覚なのか想像すらできなかった。
信士はその認知情報をなんとか現実世界に皆に見える形にしようとしてあるシステムを開発していた。
まあ、俺がしつこく、そんなものは見えないんだよといつもいってたので、なんとかしたかったんだろう。
俺が開発したAIアルフ・ライラに対して、その名は
AI幻影は、全く無関係なカテゴライズされた通常繋がることはないだろうデータ群からある確率でそのデータ群をリンクさせ新たな全く違う今までなかったカテゴリーを生成するしろもので、幻のようなものだった。
今回、時空位相世界のデータをこのAI幻影にかけながらAIアルフ・ライラにフィードバック演算させたのである。
「統括マネージャ、この里山の祠の入口と迷いの森のヒートマップを見てください」
里山の祠の入口の周囲にラインが引かれて、迷いの森の最深部につながっていた。
「何者なんだ、あの里山の地主は! 筍泥棒の対策で立ち入り禁止テープを張ってたんじゃない。これは結界じゃないか!なぜそんな物が解析で認知できる。ただ単に立ち入り禁止テープ、KEEP OUTのテープじゃないか」
「はい、AI幻影が初めて役に立ちました。この結界線は、二重円環と五芒星が内接しており北の一点が迷いの森と接続しています」
「地主のじいさんは、何か確実に知ってるな。もう一度話を聞く必要があるな」
信士が現場に居たらその場で二重円環と五芒星を共感覚で認識しただろうが、AI幻影は解析でその様子を導き出したのである。
「信士さん、このヒートマップで迷いの森の中を赤い点が移動しているのは、何かしら?」
「それは、葵さんが持っている青色のガラス玉の追跡後ですね。緑の点が平行してあるのは時空無線機の追跡後です。
十三夜さんがオレンジの点で軌跡が分かります」
「なるほど、天青色のガラス玉を覗きこんだ地点がここだな」
「そうです。その地点が問題ありなんです。時間情報の解析結果がこれです」
「ほう、四次元を可視化できたのか。これはまたすごい発見だな。時間軸が観測できている」
「はい、時空位相世界に飛ぶには『天青色のガラス玉を覗きこんだ地点』特異点としましょうか、この地点から
飛ぶことができるのではないかと。幸い時空無線機がその場所に放置されているので、特異点は今でも補足できています」
「これで、十六夜がいる時空位相世界である一万九四六年以降に行ける手がかりがつかめたな」
俺は十六夜の面影がのこる十三夜を見て言った。
「また、ワタシのこと、見つめてる」
「気にしないでくれ、十六夜……」
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「マスター、十三夜ちゃんは今度どうされます」
「葵が預かってくれ。明日からは十三夜はインターン生として葵の下に付ける。
よろしく教育してくれ」
「はい! わたし一人っ子で妹が欲しかったんですよ」

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