ここ伏見集落から山城へ向う道は、地上、航路は何度も辿っている。翡翠でできた木のような集合体の林や、補給路の位置まで全て覚えてしまった。
亜音速で飛んでいるにも関わらず全てはっきりと認識できる。伏見から宇治の鳳凰堂上空でさらにに加速し、南に向かうルートである。
そういば、十夜族の長兄の
スクランブルで追走を受ける側はこういう気分なのか。しかし敵ではない、あれは不死鳥のフェニックスの
「早神令時様、お久しぶりです。護衛いたします。
「久しぶりだな。纏ってる炎はさらに紅蓮が増しているようだが。護衛と言ってもこのあたりにはもう敵対する者もおるまい」
「地下迷宮の入口までは護衛させて下さい。全力でお守りいたします」
「だから敵はいないって。まあこれで最後だから好きにしな」
十夜族長兄の
その時は、
始祖は
何故なのか、その出自は聞いたことがなかった。先代である六七六五年の第二十代早神心に仕えていたことは知っている。
とまあ、それから6千年も生きていることになるが、不死鳥のように多分転生を繰り返しているのだろう。
彼もまた、時空の連環にとらわれているのだ。永遠に。
眼下に地下迷宮が見えてきた。周りはジャングルの様に翡翠の樹木が生い茂り、入口へと辿る幾筋もの突入ラインの跡が残っていた。 かつてこのダンジョンに突入しようとしたパーティ達である。入口まで到達したラインは無い。
しかし、俺はその入口への侵入ルートを知っている。おれの時代ではこの地下迷宮は地上20階、地下七階の研究施設である。
一般には公開されていない、業者専用の搬入経路がそれである。そのルートが1万年後でもなんと有効なのだ。
その入口から地下へと入ることができる。更に地下七階は、超巨大地震にも耐えうる構造をしている。
現にこうして、地上部は崩壊しているが、地下は無傷であることは以前の探索で分かっており、誰も人が管理しておらず、AIシステムがずっと管理しているのである。
「ギギ、令時殿、侵入ルートご存じか? 我が父から教えて貰ったルートとは違うようですが」レアフルが言った。
「ああ、お前のは昆虫族の地下ルートだろう。上空からは違うルートを辿る。ついてこい」
「マスター、入口が視認できました! 帰れるでしょうか?」俺の背のコックピット様の中に搭乗している葵が言った。
「問題ない。認証カードは持っているな」
「はい、二枚あります。本物と時空を経たもう一つの本物。どちらを使いますか?」葵は手元に持っている真新しいカードと 1万年を経た古びた特殊エンジニアリングプラスチックカードを見ながら言った。
降りるぞ。
そこは、地下迷宮への入口そして現世への帰還の入口である。

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