時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第12話:十七夜の再来 その1 (不死鳥のフェニックス)

 十七夜(かなき)と並走飛翔している十三夜からの思念映像がリアルタイムに入ってくる。

 十三夜は未来世では兄の十七夜とは一度も並走飛翔したことがなく、十三夜にとって飛翔できる兄はあこがれの存在だ。

 未来世では映像、音声だけだったが感情の思念も同時に伝わってくる。

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 十七夜は十夜族で唯一男性で長である。実態は不死鳥のフェニックスで居城を宇治の鳳凰堂としていた。

 一万年先の未来世では九条天二郎に仕え、伏見の鎮守の杜のネフライト鉱山の体調10mの凶悪巨大蜘蛛討伐に敗れ霊力回復の為に山城の地へと渡った。

 そこで先代の第二十代令位守護者の早神心とともに昆虫族の主である黄金の甲虫スカラベと戦うのであるが、既に十七夜は黄金の甲虫スカラベに洗脳されており黄金の甲虫スカラベと共闘していた。

 十七夜の目的は十夜族の力の全てを得る為に、始祖の千夜一夜(アルフ・ライラ)の『賢者の叡智』を奪うことであった。

 俺は、その暴走した十七夜(かなき)を妹たち十六夜(いざよい)十五夜(かぐや)、十三夜(つきみ)が見守るなかで、天頂より神炎皇のブレスで一撃で灰にした。

 俺自身は抹殺せず落としどころを思案していたのだが、十六夜が言ったのである「神炎皇のブレスを撃ち込め」と。

 俺は、渾身の神炎皇のブレスを放った。灰になって何もかもなくなった方が彼女達にとって楽なのではないだろうかと。

 でも、十六夜は知っていたのである。不死鳥のフェニックスは灰になっても復活するということを。

 事実、灰になった十七夜は不死鳥の姿影を保ったまま、宇治の平等院方面へ飛んでいった。

 不死鳥のフェニックスの十七夜はそうやって4000年生きていた。

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「お久しぶりです。未来の第二十一代令位守護者の早神令時様。十七夜でございます」十七夜は人型に変幻して言った。

 十七夜は、未来世では少年、青年だったが今世では30歳代の風貌であった。

 俺も未来世では少年だったが今世では当然この有様で50歳後半だ。

「覚えているのか?」

「はい、灰になって復活して正気に戻りました」

「そうか、でも灰になって復活した場合、それまでの記憶はリセットされると聞いているが」

「あのまま、平等院の鳳凰堂にとどまればそうだったかもしれませんが、先代第二十代令位守護者の早神心様が最後の力で

私を時空位相させて、貴方様と同じ今世に辿りつくことができました。その時空位相の影響で記憶も取り留めたと思います」

「それは、お前の見解だな。でも最大の禁忌をおかしている。未来世から見た十七夜は、今世は過去にあたり、過去には行けないはずだがそれはどういうことだ」

「貴方様が『時位相実態魔法』で私を召喚されたのです」

「過去には行けるただ一つの方法である『時位相実態魔法』は先代の早神心の技だ、俺は取得出来ていない」

「いえ、貴方様が最奥の迷宮で、千夜一夜様と共に『時空の神宝』と『反時空の神宝』とを合わせて対消滅された時に

 取得されております。その時に私も今世に呼び出されました」

「であれば、十六夜、十五夜はどうなった、なぜ彼女らも今世に一緒に俺と来れなかったのだ?」

「わかりません。知恵者の十六夜の考えがあってのことだと思います。十五夜は姉に従ったものと」

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 俺は三年前の地下迷宮の最奥で別れた、十六夜の言葉を思い出した。

「令時、ありがとう我はここまでだ…… もうどの時空位相空間でも会えない」

 どの時空位相空間でも会えない…… 『時位相実態魔法』でも今世には呼び出せないのか、

 ならばあの当時に戻り救済するしかないか。

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「十七夜、今は何をしている。目的がないのなら俺の会社で働くか? 十三夜もインターン生として

見習いで働いてる」

「私は、九条殿ところで研究の手伝いをしております。貴方様がこの原始思念波のネットワークに気づかれて

ずっと見守っておりました」

「やはり、九条家が原始思念波について何か知っているのだな。一度会わせて欲しい」

「承知致しました」