時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第13話:十七夜の再来 その2 (森山遺跡)

 不死鳥のフェニックスの十七夜の言うところによると、平等院の鳳凰堂上空で灰から復活すると同時に時空位相で今世に引き寄せられてたとのことだった。

 時空位相の引き金は、俺の今世への帰還である。

 十七夜は、記憶を有したまま今世に辿り着き、未来世で仕えていた九条家の先祖を頼るため、俺の実家付近にある里山のオーナーの九条慎太郎を探し出した。

 今世の九条家は原始思念波を扱うことが出来てそれを十七夜が察知したようである。

 そこへ、今回俺が原始思念波ネットワークに干渉したことで、俺を認知できた。逆に俺、九条氏への接点が開けたということになる。

「マスター、また実家に行かれるのですか? 九条氏の拠点が分かったのですね」

「ああ、森山遺跡の地下に研究所がある」

「まあ、そんなところに。森山遺跡って先代の第二十代令位守護者、早神心が最後に潰えた場所ですね」

「先代の第二十代令位守護者、早神心であるが、今世から見ると俺の子孫だな、ややこしい。

 互いに無為に時空位相で呼び合いだすと、フィボナッチの時空連環を再度作ってしまうことになり折角、『時空の神宝』と『反時空の神宝』の対消滅でフィボナッチの時空連環を絶った意味がなくなってしまう」

 十六夜、十五夜を救い出すというミッション自体がフィボナッチの時空連環を再構成してしまう可能性がある。

 時空位相間の時系列が破綻しないように行動しなければ。

「森山遺跡地下研究所には、未来世でその場所で時空位相に巻き込まれた十三夜と行く」

「では、今度はこちらが観測者ですね。信士さんといっしょにモニターします」

「よろしく頼む」

 移動は、未来世では牛ドラゴンの十五夜が引く煌びやかな平安朝の牛車であったが、今世では自走ランドクルーザーである。

 移動速度は100km/hであるが未来世の牛車でも同じぐらいの速度であり、十三夜はそれほど驚かなかった。

 それよりも、車内の装備には興味深々のようであちこちいじり倒していた。

 十三夜は、車内の3Dモニターはお気に入りである。自信の過去の飛翔シーンの記憶を3Dモニターに直接表示することができるようになったのである。

 特に森山遺跡で、体長10メートルの大鍬形(オオクワガタ)との戦闘での紅のドラゴン(俺)と蜂妖精女王(十三夜)の回転急降下のシンクロ映像は何度見ても素晴らしかった。

「ココダ、見覚えがある。1万年前でも居住モニュメントはカワラナイナないな」

「着いたようだな。十七夜がモニュメントに座って待っている」

「この先に九条慎太郎がおります。こちらに。早神令時様そんなに警戒されなくてもよろしいかと。あの時は私は黄金の甲虫スカラベに洗脳されておりましたが、今世ではその束縛はなく間違いであったことは認識しております」

「そうだな、お前の思念波が当時とは違う清明な原始思念波を纏っていることが俺には分かる。信用しよう」

 縄文風居住モニュメントが入口になっていた。ここには文化遺産の森山遺跡しかないにもかかわらず、地下に研究所が建てられていた。

「ここは、秘密の研究所なのかな?」

「いえ、表向きには公的な歴史建築研究所です」

「表向きと言うには、実体の研究は違うのだな」

「その辺りは九条にお聞き下さい。地下2階で待っております」

 地下への階段をおり1階は十七夜が言ったように、歴史建築物の遺物の陳列物があった。

 地下2階は様相が全く異なっていた。

 小型のガイドマーカーが格子状にピラミッド状態に組まれて、その中央には翡翠が埋め込まれているようだった。

 翡翠の形状は勾玉(まがたま)で古来の遺物のようである。その翡翠の勾玉はまぎれもなく最上級グレードに匹敵している。

 おかしい、これ程の最上級グレード翡翠を組み込んだ構造物が存在するなら、俺のAIアルフ・ライラ+幻影で捕捉できたはず。

 それが、何の痕跡も捕捉できなかった。九条氏は一枚上手だ。