ドローンは、意思があるかのように上下左右に揺れながらも、サバクトビバッタ群体のボスへと距離を詰めていた。
個々のサバクトビバッタは、ドローンを異種の危険個体を判断したのか、集中的に攻撃を受けては、ローターに巻き込まれて散って行く。既にカメラレンズは体液で覆われており、はっきりとは視認できない状態となっている。
手動操縦はもうはや無意味で後は、AI自動制御に任せるしかなかった。
3DのVRから見えた最後の映像は、ドローンからボスへ向けて噴出された特殊蛍光塗料が拡散した様子だった。
その後は、姿勢制御が不能になり落下映像が続いていた。
「早神殿、ドローンを失ったことは残念じゃが、ボスに特殊蛍光塗料をマーキングできたし、上出来だと思いますぞ」
「まだ、ロストと決まったわけではありません。落下地点の位置情報が残ってるので、運が良ければ回収可能かと。
補助カメラで何か映ってるかもしれませんし、回収したい。郭君、この落下地点は車で行けるところかね?」
「早神さん、山脈の中腹の斜面なので車では無理です。プロの登山家じゃないと無理な場所ですね」
「葵、ドローンの落下地点とサバクトビバッタ群体の距離は十分あるか?」
統合AIアルフ・ライラが先に、音声認識で葵が返答する前に3DのVRにオーバーラップ表示してきた。
対象物体距離間10.0543km。無駄に精度が良かった。
「マスター、10km程あるようです」
「そのようだな。
サバクトビバッタ群体からは離れているので危険はないと思うが、逸れサバクトビバッタには気を付けるように。
危険と感じたら、ドローンは即座に放棄して戻るように。
投影裸眼のネックレスで、いつものように脳内に直接映像をオーバーラップしてバックするから」
「わかってるって、デキルヨ。レイジ、いつもと違って慎重過ぎるな」
解明できておらず、実用科学の領域だ。
未来世ではこの脳内に映像化された情報をスマートフォンに転送できたが、今世ではできていないので、皆と共有するとはできず、言葉でのやりとりとなる。
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山肌の斜面を滑空して降下している様子が脳内映像化されてくる。
蜂の昆虫形態といっても人型妖精で体長20cm程だ、はぐれサバクトビバッタに遭遇しても体格さでなんら問題はなく、避けて飛翔していた。ただ、はぐれサバクトビバッタは皆、
どうやら発見したようだ。地面へ降下する。ドローンがちらっと映った。
「コレだな。ローターは体液でドロドロだよ。飛べないはずだ」
「
「ワカッタ」
はぐれサバクトビバッタは、今度は落ちていくローターを追いかけていった。
元の群体に戻って、ボスの後方に尽くようにと。

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