時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第35話:思念波の遮蔽素材

 信士は、日本から持って行った隠しボックスと同じ型のボックスに使用されている素材でどの素材が思念波を遮断できるか実験した。

 疑似思念波は既に遮断されており対象にできないので、京都御所から放出される原始思念波を対象にして、遮蔽実験を行った。

 ボックスに、時空無線機を入れて蓋をすると確かに、ボックスの時空無線機の思念波受信レベルはゼロになっている。蓋を開けて御所のある方角に向けると、思念波を受信できることから、間違なく、この蓋に使われている何かの素材が遮蔽している。

 外装から内装にかけて素材一覧は、以下のようになる。

 ・超耐久合成皮革(ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、炭素繊維)‐高分子

 ・超々ジュラルミン(アルミニウム、亜鉛、銅、マグネシウムの合金)-金属

 ・超低密度ポリエチレン(比重0.89以下のポリエチレン)-高分子

 何気に凄い素材が使われている。早神統括マネージャは、何を入れるつもりでこのようなボックスを持っているのか。

 調べた結果、この三層構造が必須で、しかも内側は超低密度ポリエチレンでなければならない。更に踏み込んだ実験で、以下の三層構造により思念波の遮蔽効果が得られることが分かった。

 いづれもAIアルフ・ライラの瞬時の推論と仮想実験によるものである。

 信士は、「素材」と「事象」とわずかな「ヒント」と「希望」をAIアルフ・ライラに、伝えるだけで良いのである。AIアルフ・ライラの解は以下となった。

 【外層】:炭素繊維‐鉱物繊維

 【中層】:アルミニウム-金属

 【内層】:超低密度ポリエチレン-高分子

 我々は、以前から鉱物、金属系の素材でいろいろ試していたがそれではだめなのである。

 思念波遮蔽装置への道が開けた。

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8時間かけて成都に戻ってきた。郭を休める為に岷山山脈の麓からここ成都まで運転したのは、俺である。この老体で連続8時間の運転は流石にもうこれっきりにして欲しい。

郭の実家になだれ込んで、椅子に座り込んだ。白茶が出された。このお茶は郭が言うには、疲労回復とリラックスができるというこだ。今の俺にはちょうど良かった。

「相変わらず、尾行されいるようだな」

「そうですね。岷山山脈に展開していた現地部隊ではなくて、成都の直轄部隊のようです」

「郭君の実家を巻き込んでしまって申し訳ない」

「いえ、大丈夫ですよ。前に言いましたがうちは、高名な風水師で

成都の機構内部にもいろいろ参画してますので、逆に情報が入ってきてるはずです。ここは一番安全な場所です」

「そうだな。帰りは上海によらず、東京への直行便にした方が良いな。検閲をどうすりぬけるかが問題だ」

問題は二つあった、

生きた昆虫の持ち出し制限に、サバクトビバッタは該当する。出国時の検閲で漏えいする。

また、入国時、日本の植物防疫法ではサバクトビバッタは輸入規制がかかっている。

九条慎太郎はそれらを回避するアイデアを持っているようだった。

「出国時にサバクトビバッタを低温にして仮死化状態にすれば、脳の活動も停止するので

疑似思念波は放出されないであろう。入国の方は、サバクトビバッタでないと押し通す」

「え? 九条殿、それはただ単に知らんぷりじゃないですか?」

「その通り、連中はサバクトビバッタは知っていてもこのような紫色の体色で、体長も大きく変異した

個体は見たことがないはず。標本サンプルにするで押し通す」

「お任せしますよ……。 権威あるものが自信たっぷりに言われたら信じるしかないか」