京都で待機の設楽信士は焦っていた。
AI
ボス黒紫の飛蝗の放つ疑似思念波は、岷山山脈の峠を越えて東側に降り、麓までは追跡できていたが、そこまでであった。同時追跡していた上海のグループのAI
AI
早神CEOによると、ボス黒紫の飛蝗は確保しているとのことで、ただ中国政府の検閲を避けるために、車載下の隠しボックスに入れているとのことで、生きているとのことだった。
疑似思念波は指向性はなく全方位に減衰せず放射される。捕捉できないということは何かが遮蔽していると思われた。
原始思念波及び疑似思念波を遮蔽できる物質はまだ見つかっておらず探索中である。
信士は、日本から持って行った隠しボックスと同じ型のボックスの素材を書き出した。
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そのころ、もう一つの観察者も焦っていた。中国政府機関である。
麓で追跡不能となったのである。前衛部隊からはその付近にいた、日本人の生物生態系パーティーを
検問したが蝶の調査だったと報告を受けている。念の為、ドローンの補助カメラを没収していた。
「中国人の方の身元は分かったか?」
「はい、郭宇豪、成都出身で、上海の企業で働いております。
AI幻覺
「ほう。あの噂のAIだな。日本のAI
「それで、日本人の方は?」
「昆虫生態学者の九条慎太郎、鉱物結晶学専門の九条美香とAI
「世界的に名の通ってる九条慎太郎か。以前はサバクトビバッタ群を追ってたはずだが、今回は今更、クロオオムラサキの蝶だと? AI
中国でも、思念波の研究は内密に進んでいた。気の研究から発展して思念波の受信装置を開発していたのである。
もちろん軍事的な需要から来ている。時間ゼロの通信の可能性、相手を自由にコントロールできる手法の開発である。
これが開発されれば、軍事バランスは一気に崩れることになることは明白である。
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「マスター、信士さんからですが、やはり疑似思念波は隠しボックスに入れてから
京都、上海とも受信できていないようです。何かに遮蔽されていると」
「そうか、その方が都合が良いかも」
「早神殿、どうしてです?」
「さっきの検問ですよ。郭の身元、先生達と我々の身元はばれましたし、このパーティーは
誰が見たって怪しすぎる。ほら尾行されてますよ。我々の目的がもしかして感ずかれてるかもしれない」
「まさか、疑似思念波を追ってる者が中国政府にいると?」
「そう、思った方が良さそうです。だから疑似思念波が漏れたら、その時点でアウトですよ。九条殿」
「なんとしても、持ち帰らないと。どうやっても」
「だめですよ、強硬手段は絶対に。外交問題に発展しますよ」

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