時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第40話:李神美の素性 その2 (ゼノ核酸)

 李神美(リ・シェンメイ)は第20代早神心(はやがみこころ)を知っていた。

 未来世での第20代はフィボナッチ数列の時空時間では、6,765年である。

 俺自身の未来世で第21代での時空時間は、10,946年であり一代の差であるが相当数の年代差がある。

 俺は未来世では、第21代の令位守護者であり、森山遺跡最深部で第20代早神心から「反時空の神宝」を託されたことがあった。

『過去より辿りし紅の者へ、

千夜一夜を顕現させ、

時空位相の連環を絶て、

ここに、反時空の神宝あり。

六七六五 早神心』

 これは、第20代早神心が残したテーブルに刻まれたレリーフである。

 当時第20代に仕えていたのは、十夜族の長兄の十七夜(かなき)であり、その二人しか知らない。

 当時の最大の敵は、昆虫族の王である黄金の甲虫スカラベであった。

 彼女は、第20代の時空時間に行ったことがあるのか? そこで何をして、何を知り得たのか。

 李神美は、席を立ち、奥の棚からバックを取り出してテーブルの上においた。

 見覚えのあるバックである。間違いない、「アンティークな箱型のデザインで、おしゃれなバッグ」あの時の「反時空の神宝」が入っていたバックである。

 てっきり、第20代の趣味だと思っていたが、李神美の趣味だったのだ。このバックのイミテーションをその当時、記憶実体魔法で作ったのだ。

「あなたが、時空位相に巻き込まれた『二〇二五年一二月十日 午前二時〇分』に

私も京都の九条先生のところで研究成果をまとめていたのよ。

それで、あなたとは違う年代に転移した。転移先では早神心(はやがみこころ)がいたわ。

彼からいろいろと教わったわ」

「そうでしたか。我々以外も時空位相に巻き込まれたものがいたのですね、しかも違う年代に。とういうことは、貴方も実体魔法を発動できるのですね」

「ええ、記憶実体魔法、連想実体魔法はできるわ」

「準令位守護者の信士と同じだな」

「あなたには、未来世で、成し遂げないこといけないことが一つ残っているわ」バックを覗きこみながら李神美が言った。

「俺は、未来世から十六夜(いざよい)を救出すること目的に動いている。それだけだ」

「黄金の甲虫スカラベをまだ倒してないわ。この魔物を生かしておくかぎり未来世で人類は消滅してしまうわ」

「そんなばかな! 地下迷宮 地下7階サーバ室で『時空の神宝』と『反時空の神宝』とで対消滅させた時に、甲虫スカラベは、蛍胞子によって脳の神経を毒素で溶かされて絶命したはずだ」

「これを」李神美はバックからクリスタルガラス瓶を取り出した。

「乾燥材と何か昆虫の固い上翅の欠片のようですね」俺は嫌な予感がした。

「これは昆虫族の王である黄金の甲虫スカラベの子孫のものです。第20代の時空時間で取り逃がしてしまいました」

「というと、別の黄金の甲虫スカラベがどこかにいると?」

「しかも、非常にやっかいなことがあります。今回の現世、ボス黒紫の飛蝗とも関係があります」

「私は上翅の欠片の遺伝子解析を行いました」

 信じられないことに、遺伝子はDNA、RNAではなく人工的なゼノ核酸XNAで構成されていた。

 XNAはDNA、RNAよりも優位で紫外線では破損しなかった。

「ボス黒紫の飛蝗も同様にXNAで構成されています。何者かがゼノバイオロジーで作り上げたか、DNAからXNAに置き換えたものと思われます」

「ばかな、現在においてそれはオーバーテクノロジーである。そんなことはまだどの国の機関でも

絶対できない」

「たしかです。現在ではできません。未来世のどこか、または太古の昔で既に自然にあったかです。XNAの生命体は長寿、変身、変態でき、狂暴であることも特徴です」李神美は 十三夜(つきみ)を見ながら言った。

「エックス・エヌ・エー 生命体ナノカ」十三夜(つきみ)は意味もわからずどや顔をして言った。

「昆虫種のは駆逐しなければなりません」厳しい目で李神美は言った。

 俺も、紅のドラゴンに変身できる、XNAに置き換わってしまっているのだろうか? 今のところ狂暴性はない。