AIアルフ・ライラから指示された洞窟進路は、かつて、いや1万年後の未来で十夜族と探索者アリサと共に辿ったルートと同じであった。
緩やかに、ずっと下降しており、空間は徐々に広がっていった。相変わらず水晶が壁面に隙間なく埋め尽くされている。
ヘッドライトのLEDの光線にあらゆる方向に、屈折し洞窟内を薄い青い光で満たしていた。
前方奥に広がる、遺跡の直下と思われる空間がまわりとはあきらかに違った構造をしていた。
ここから視認するかぎり、巨大な円筒状のよう空間である。直径100メートル以上はあると思われる。
その中を、浮遊物が光に反射してキラキラをゆらめいでいた。ライトを消すとそれは緑に発光して闇を照らしている。なんとも幻想的な風景である。
我々が、ハンディー強磁場発生器、翡翠ナノ粒子アンプルのセットを未来への贈り物として、そうギフトボックスを設置したのはあの円柱空洞の最上部の天井を越えた建物の一部の部屋である。
我々は円柱空洞の入口に到達した。円柱空洞の中央の底面には、金属容器が倒れており、アンプルが散乱していた。
その中でアンプルが割れて中身が散乱しているものがあった。キラキラをゆらめいていたのは、このアンプルから拡散した、翡翠ナノ粒子である。
金属容器内に保護されたアンプルは割れない、そもそも100m落下でも割れない仕様の耐衝撃クリスタルガラスである。
それが割れているのである。破壊されたのだ。
「レイジ、あそこにアンプルが2つある」
たしかに、アンプルが入口の隅にあった。それと共に見覚えのある物もあった。
それは、クレナザイトで作った探索アイテムのネックレスである。未来世で俺が探索者アリサの為に造ったものだ。
しかも、アンプルはそのネックレスの横に2本並んで立っていた。
「これは、未来の探索者アリサのものだなぜここに。このネックレスは未来にしか存在しない」
何かのメッセージを示していることは明らかである。
俺は、ダブルバレルショットガンのフォルダーにアンプルを1本セットし、残り1本を信士渡した。
翡翠ナノ粒子アンプルを初めて見た時にそのフォルムは魔弾そっくりであり、基本素材も同じであり、もしかしたら使えるのではとそのとき思ったが、まさしくフォルダーにはピッタリと違和感なく納まった。
「
「ネックレスって?」
「ほら、そこにあるネックレス……」
たしかにそこにあったはずの、半透明ルビー色で宝石のように輝いていたネックレスはどこにもなかった。
「アンプルを探すのね、じゃ」
「待て、そのまま飛び込むのまずい。敵が潜んでいるはずだ。位置が特定できていない」
あの、ネックレスがあれば敵も索敵できる、なければ翡翠媒体以外であれば同じものを記憶実体魔法で錬成できるはず。
今、見た記憶と未来世での記憶を合わせ、クレナザイト製半透明ルビーのネックレスを錬成した。
この付近は、翡翠ナノ粒子が拡散して、思念波が増幅できる好条件であった。
但し、これは敵にも好条件な環境である。
「
「あ、コレってアリスのと同じ。でもワタシのサイズにちょうどだ!
左奥に1本、前方奥の壁面に3本、右上壁に巨大な異形のモノ1匹」
「上等だ!」

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