入口は、竹藪で覆われていた。里山の『迷いの森』からは北へ200mの所にあった。
子供にいつも見ていた場所に今でもそこにあった。ミニチュアの鳥居も倒れているが存在している。
里山の『迷いの森』を含めてここ一帯は、例の九条家がオーナーであるが、その入口の存在は知らないとのことであった。昔誰がミニチュアの鳥居を設置したかも不明であり、未踏の洞窟で入口であった。
子供の頃は、里山を駆け回っていたが友達も含めてここだけはなぜか避けていた。
入口は狭かったがはすり鉢状に深くなっており、進むにつれて空洞が広くなっていた。
「こんな風になっていたのか」
LEDヘッドライトから出た光が、方向を変え光線が無数に洞窟中に交叉している。
周囲の壁面に無数に張り付いている、水晶が光を屈折していた。
「ああ、だめ」
無数の光線が視界を交叉するので上下感覚を無くしてしまうのだ、俺も足元がふら付いている。
信士もダウンしてしまっている。
「一度、ライトを消して、重力方向に意識を集中しろ」
光線の残像だろうか? 暗闇にほのかに淡い紫の光がゆらいでいる。
「これは、未来世の地下空洞の状態と同じじゃないか……。ここは、今の時代からすでに異界状態なのか。
「コチラの方が自在だわ。めまいもシナイ」
「
「ワカッタ。夜光ダケの発光だけでミエルヨ」
蜂妖精女王は、紫外線が感知できるのでこの暗闇でも難なく奥へと飛翔していった。
洞窟奥から漏れ出す嫌な感じの思念波が伝わってくる。これは大型昆虫が出す異種の思念波だ。
AIアルフ・ライラからは報告されていない。ここは思念波の密度が高く、実体魔法を使うことができた。
俺は、反射的に、記憶実体魔法で手には神ダブルバレルショットガンを持ち、信士も同じく、神6連層リボルバーを所持していた。
「早神統括マネージャ、これ役に立たないですよね」
「そうだな…… 魔弾が無い。魔弾は生成触媒である適正な翡翠がなければ実体魔法では錬成できない。張ったりでしかないか。」
進路が2つに分かれているところで待機したようである。
「マスター、洞窟進路を送りました。遺跡の直下への進路は99%の確率です」
「どうしてわかった、この洞窟は未踏のはず」
「いえ、マスター自身が既に遺跡の直下まで踏破しています。今転送したルートは未来世の探索者アリサが辿ったルートと全く同じです」
「そうか! ではこの二股の分かれ道から目的の位置まで200メートルというところか。
こちらが、実体魔法を使えるということは、相手も同様のアドバンテージがあるということだ。
「ワカッタ」
いや、蛍ではなくて、蛍胞子だ。この洞窟で活動できるということは、彼らも多分ゼノ核酸体でできているのであろう。
最後に分かれてからこいつらは、こんなところで待機してたのか。

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