時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第52話:スカラベの起源とベテルギウス

 黄金甲虫スカラベ王の子孫であるプラチナ甲虫スカラベは上翅の片側が破損していた、未来世での山城の地下迷宮内で黄金甲虫スカラベとの最終決戦場で、このプラチナ甲虫スカラベもその場に身を潜めていたのである。令時達の戦闘でプラチナ甲虫スカラベは上翅の片側を破損していた。

 黄金甲虫スカラベ王が庇っていなければ、絶命していたであろう。

 アルフ・ライラが憑依した葵と令時が時空の神宝と反時空の神宝が対消滅させ、時空を切り裂き

元の時代に戻ろうとした。

 その時に、ついてきたのは、十三夜(つきみ)と三匹の蛍胞子だけではなかった、

 プラチナ甲虫スカラベも親の仇と使命を帯びて追ってきたのである。

 プラチナ甲虫スカラベは、現世での円柱空洞内の対峙で令時と対当し、その実力を計ったのだった。

「十夜族とそれに組する令位守護者は葬り去らないとだめだ」

「どうしてですか、父上」

「我々は超太古の時代から繁栄してきた、その昔、昆虫族は巨大化した時代があった。

いまでこそ我々は大杉に匹敵する大きさであるが、一時期はその種子程度の大きさまで劣化したことがある」

「はい、それは聞いたことがあります。十夜族の始祖が現れた時代にはすでに小さかったと」

「そうだ。我々は隠れたのだ。敵になるだろう十夜族から」

「なぜ、敵なのですか」

「あいつらは同じ赤星起源ではあるが別種である。将来この地アースを支配するつもりだ」

「支配してどうするのです。太古に巨大化した生物は昆虫以外でもドラゴンがいてこの地上を制しましたが、我々には無関係でしたよね」

「そうだ、ドラゴンは巨大化しすぎたが、この地アース自身の種である。我々とは競合しない。

天空からの神宝の落下によって地上種が激減し、活動エネルギーを得ることができず滅んでしまった。

神宝はその後、何百億日と地下に眠ったままであった」

「はい、聴いております。その神宝がのち活性化して十夜族の始祖が出現したと。

でも、令位守護者はアース起源の種ではないのですか?」

「令位守護者は特殊だ赤星起源とアース自身の種が交じり合っている。やつらは十夜族と組んで、この地を第二の赤星にする気だ。すでに我らの故郷、赤星は巨大化しすぎて爆発消滅している。

ここで、令位守護者の種族を抹殺しておかないと、我々の未来はない」

「そんなことを……」プラチナ甲虫スカラベは、父の黄金甲虫スカラベ王と話を思い浮かべながら

円柱空洞内を脱出し北へ向けて飛翔した。

 早神令時は、プラチナ甲虫スカラベが飛び去って行くのを見た。

 プラチナ甲虫スカラベの接触で、圧縮された翡翠ナノ粒子ミストの中で増幅された思念波の深淵から

 あるキーワードを得ていた。

 (巨大化、恐竜、赤星の爆発消滅、地球種、天空からの神宝の落下)

 彼らの概念からすると昆虫種は地球起源の種ではなかったんだ。

 それに赤星の爆発消滅とは多分オリオン座のベテルギウスのことだろう。未来世ではそこには

 赤いガス雲が広がっていた。

 染色体の調査では、昆虫は確かに地球種であるが、一部の者はゼノ核酸体で地球種ではない。

 十夜族の十三夜(つきみ)もゼノ核酸体で構成されており地球種ではない。

 それに俺ですら一部の器官がゼノ核酸体が混じっている。

 我々の方が、侵略者側なのか? いやそんなことは無いはずだ。

 プラチナ甲虫スカラベが飛び去った方角からして次のターゲットはリージョン1のようである。

 今度こそ、詳細に会話で聞き出さないといけない。