円柱空洞内のかき乱された翡翠ナノ粒子ミスト中に三つの発光点が見えた。
プラチナ甲虫スカラベに取り付いたのである。
「レイジ、あの子たちは、スカラベに取り付いたよ」
「ああ、よく背後に回れたな、
「魔弾に気をとられすぎなんだよ、あいつ」
昆虫形態に変幻できる蜂妖精女王の
思念波から己の種についての成り立ちを知ったようだ。
われわれは、地球にとっては異端の種なのである。その起源は未だ不明であるが。
「取り付いただけで、ダメージがなく傷口もないので体内への侵入は無理だな」
「ソウダネ、でも居場所がワタシにはわかる。リージョン1に向かっているわ」
「そのようだ。リージョン1も潰すつもりだろう」
今から、リージョン1に行っても遅いだろう、それよりもリージョン3だけは死守する必要がある。
「
「ワカッタ」
「九条博士、リージョン1は壊滅したようです。リージョン2の防衛は諦めて、リージョン3に向かうと早神殿から報告があります」
「お前も、リージョン3に行きたいのだな、美香。お前が行っても足手まといなる。相手はゼノ核酸体の大型昆虫らしいではないか。
この映像からすると10mはあるな。こいつを少しでもリージョン2に足止めして時間を稼ぐのだ」
「はい、でもどうやって?」
「あの、翡翠ナノ粒子アンプルの使い道を早神殿が教えてくれた。思念波を載せて発射すれば強力な武器になる」
「でも、私達は実体魔法もなく、早神殿がお持ちのような魔銃もないです」
「儂が、リージョン2に行く。翡翠ナノ粒子アンプルの予備はあったな?」
「はい、1ダースを葵さんにお渡ししたので、後、試作品の3弾しか残っていません」
「そうか、足止めには十分じゃ」
「九条博士、思念波を使えるのですか?」
「いや、儂自身は使えないが、この装置を付ければな」
九条博士は、第4世代の仮ボスの飛蝗から視床下部の松果体に相当する頭頂眼を取り出して、ゼノ核酸のみを生成してパッケージにした。それを小型ハンディー強磁場発生器に取り付けていた。
その恰好はまるで、昔のSF映画に出てくるのと同じであった。違って入るのは、手に持ってるのは、銃ではなくて吹き矢であった。さしずめビートル・バスターズと言ったところか。
いやメンバーは一人だが。
「先生、その恰好は? 吹き矢なんて……」美香は口元に手をやった。笑いをこらえるが精一杯だった。
「なにかな、お主も知ってる通り、我、家系は古来忍者の出だ」
「え、そんなこと初めて聞きましたが……」
「いいから、そのアンプル試作品3弾をよこせ」
白衣で、背中にバッテリーを背負い、腰には小型ハンディー強磁場発生器をぶら下げて、
その装置から、思念波を閉じ込めることができるボックスからアイデアを経て作られた特殊合成線が手元の吹き矢の中点に接続されていた。
「しかし、あんな巨大なものが四条上空に現れたら大騒ぎにありますよ。隠れ場所なんかないし。
しかも、そんな恰好で迎え打つなんて」
「まあ、直ぐに車を出せ。先回りして待ち受ける。3弾放ったら結果に関わらず退避する」
九条博士と美香は、リージョン1の烏丸御池交差点に向かった。

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