過去の二千年時代から時空位相してきた第二十一代令位守護者である早神令時がこの世界に降り立ち昆虫族の魔物を制圧し、時空の神宝と反時空の神宝の対消滅によってフィボナッチ数列年による連環を絶ち切ったことは事実である。
それにより、ホモ・サピエンスの生命樹系統と十夜族の生命樹系統は安定し、発展するはずであった。
早神令時が元の世界に戻った後の三年の間に、昆虫族内の勢力バランスが変わってしまった。
昆虫族王の黄金の甲虫スカラベが死し、その子孫のプラチナ甲虫スカラベが早神令時と共に過去の二千年時代へと時空位相したがために、フィボナッチ数列年による連環が再始動してしまったようなのである。
大陸の龍族から使者が来ていた。
「久しぶりじゃの、
「彼の地、龍族の守りの黄龍がわざわざ、お出ましとは何用かな」
「本日は我大陸で
海を渡ろうとする勢いだ。
長い時の今までは単なる1個体単位であったものが黒紫の
「それは、この地のホモ・サピエンス、十夜族にとって脅威になるのでしょうか?
この地でもまだそれほどの脅威とはなっておりませんが黄金の甲虫スカラベ王が死してから、なぜか
「おお、牛キメラの竜の
それにより時空位相の時
これではまずいのじゃ。龍族の将来も安泰ではなくなってしまう。第二十一代令位守護者の紅竜のちからが必要じゃ」黄龍は
「第二十一代令位守護者の令時とは、あれから、一度だけ精神体で繋がったことがある。我を救済しようとしておる。我はこの地、この時代の生命体であるというのに、令時の時代で暮らしていけるものかのう?」
「
「そうだな、なにやら人工的に時空位相できるような技術を開発しようとしているようだな。いずれこの地に舞い戻るだろう」
「まずは、
「大陸へは海を渡らなければならない、我らは飛翔はできないのじゃ。そちの背に乗るのも遠慮したい。まあ、令時の紅のドラゴンの背であれば乗るがの」
「ならば、牛キメラの竜の
龍の近縁種である竜であれば使いこなせるであろう。それで彼女の背に乗るということでどうじゃ」黄龍は手から真っ白な翼の衣を取り出して言った。
「御受けしますわ」姉の
「わかりました、
「我ら龍族、十夜族と一部のホモ・サピエンスは思念波で意思疎通ができる。昆虫族とて疑似思念波で意思の概念が分かる。
しかし、今回現れた黒紫の
「承知した。似たような話を以前、精神体の令時から聞いたことがある。そこでも昆虫群体が発生したと。
そのボスの特殊器官から得た機能と思念波を利用して精神体として我とコンタクトが取れたようだ」
「おお、そのようなことが。では引き受けてくれるのか」黄龍は髭をなでおろしながら言った。
「引き受けよう。群体全体の疑似思念波には興味がある。何しろ初めてのことだからの」
ペガサスの白衣の翼を纏った牛ドラゴンの
かつて、早神令時が紅のドラゴンに変幻し始めて空を飛んだ時と同じように、
「ああ、これが空を飛ぶっていうことね。これで私も令時さんといっしょに飛べるようになるわ」
そのスキルが天空でも発揮された。天空でも最速ではなかろうか。
「姉さん、背に乗って」
「翔るよ!」

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