時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第70話:再会、十六夜

ペガサスの翼を纏ったキメラ体の牛ドラゴンである十五夜(かぐや)は、偏西風の追い風にのり音速を越え海上を渡りきり山城の地へと戻って来た。

背には、姉の十六夜(いざよい)を乗せていた。

「姉さん、令時さんを捕捉したわ。前方の宇治集落の入口ですわ」

「わかった、城門のところに降りて」

城門には、九条サクラ、リンとハズキが出迎えていた。

十六夜(いざよい)様、無事お戻りで何よりです。令時様ももうすぐこちらに来られます。この地の北の飛蝗の群体を一掃しようとなされていましたが、なぜか撤退なされました」

「我が止めたのじゃ。あの群体は大陸の飛蝗の群体の先鋭隊だ。今ここで叩くことは容易いが、大陸の本体と連動しておる。余計に先鋭隊が繰り出され収拾がつかなくなる」

「そうでしたか、大陸ではそのような本体が存在するのですね」

「そう、その数と生息地域はもうこの地の昆虫族の比ではないぐらいに増殖しておる。まずは、南の追走してきた単体のプラチナ甲虫スカラベを討って、大陸へ行くのじゃ」

「わかりました、この地の飛蝗の群体は、リンとハズキで持ちこたえます」

「まかせておいて、母上」ハズキがすぐさま答えた。

「二人でこの地を守ります。令時様がお戻りになられた」リンが舞い降りた紅のドラゴンを見て言った。

紅のドラゴンは人へともどり早神令時と成る。

「待たせたな、十六夜(いざよい)」込み上げる思いを抑えながら俺は言った。

「まあな、令時」十六夜(いざよい)は令時のひとみを見つめながら言った。

これだけで十分だった。思念波での思考のやりとりはもう十分すぎるほど会話をしていた。

十五夜(かぐや)、すまない信士は連れてこれなかった」

「いえ、大丈夫です」人型へと変幻した十五夜(かぐや)が言った。

十五夜(かぐや)へは、信士の近況を思念波で送り込んだ。十五夜(かぐや)はクスっと笑みがこぼれた。

「これから、南の追走してきた単体のプラチナ甲虫スカラベを迎え討つ。十五夜(かぐや)は、リンとハズキのバックアップをしてくれ」

「はい。戻られたら一緒に飛翔して下さいね。このペガサスの翼で私も飛べるようになりました」

「そのようだな。飛翔速度は恐ろしく早いようだな。俺でも追いつかないだろう」

「だいじょうぶ、合わせますわ」十五夜(かぐや)は、令時を上回るスキルを手にいれて少し舞い上がっていた。

「ワタシワ? ワタシもペガサスの翼が欲しい」

十三夜(つきみ)はすでに飛べるだろ。蜂妖精女王なんだし。一緒に南へ行くぞ」

紅のドラゴンと変幻した令時の背に十六夜(いざよい)が乗り、その頭の後方を蜂妖精女王の十三夜(つきみ)が追従した。

「やはり、令時の背の方が乗り心地が良いな。十五夜(かぐや)のは早すぎて、空気の流れも異様で息がしずらい」

「ワタシも十五夜(かぐや)姉には追い付かないなきっと。やっぱりいいなあのペガサスの翼!」十三夜(つきみ)が耳元で言った。

「今度、俺も人型の時に乗せてもらおう。あのスピードの秘密が分かるかもしれない」あんまり十三夜(つきみ)が欲しいと言うから

俺も興味が沸いてきた。もしかして記憶実体魔法で復元できるかもしれない。そうすれば十六夜(いざよい)も飛べることになる。

 漆黒の狼の十六夜(いざよい)に黒翼のペガサスの翼。すごくしゃれてるじゃないか。

「レイジ、また何か考えごとか?」

「いや、なんでもないさ。ほらプラチナ甲虫スカラベのお出ましだ」

「あれが、甲虫王の黄金のスカラベの子孫か。親の体長よりは劣るようだが、疑似思念波が我らの思念波により近い波長だな」十六夜(いざよい)が額をプラチナ甲虫スカラベに向けながら言った。

「もうすぐ、接触するぞ!」