地下2階は間仕切りがない、100メートル四方の空間で、中央の窪みに小型のガイドマーカーを格子状に組み込まれたピラミッドが設置されていた。ピラミッド上部からは原始思念波が天井に向けて放出されていた。
天井四方には、透明度の高いエメラルド色の鉱物が埋め込まれており、原始思念波はそこに集中しており、エメラルド色の鉱物は励起状態にあるのか、ザーという高周波の振動音がしていた
「十三夜、下がれ! 変幻して後方待機!」
「ワカッタ」
俺は咄嗟に記憶実体魔法でダイアモンド製防御壁を前面に錬成した。
十三夜が蜂妖精女王に変幻し、後方に飛翔すると同時に、天井四方のエメラルド色の鉱物からレーザー光のようなものが照射された。
レーザー光はダイアモンド製防御壁内で散乱し、エメラルド色に輝いていた。
本来、ダイアモンド製防御壁は物理攻撃を受け止める為の障壁だったが、無意識に記憶実体魔法を駆使した結果であった。
手には、同時に錬成した神ダブルバレルショットガンを持っていた。
「九条殿! システムを止めろ!」俺は神ダブルバレルショットガンで九条慎太郎に狙いをつけていた。
「先日はどうも。早神殿。後ろにいるのが『迷いの森』から救出した妖精かな」
「どうかな」
「十七夜君、システムを待機モードに切り替えてくれ。早神殿、すまないちょっと試させて貰った。
君の技がどういうものかを」
「悪い冗談はよして下さいよ。貴方を撃つところでしたよ」
「そのダブルバレルショットガンには弾は入ってないようだが?」
「お見通しでしたか」
「改めて、自己紹介を私は九条家の傍系の九条慎太郎です。ここで昆虫生態学と思念波の研究をしております」
「私は、早神令時です。表向きはマルチエンジニアでAI研究しております。裏では時空と思念波の関連性の研究です。ここにいるのは、迷いの森』から救出した蜂女王妖精の十三夜です」
「十七夜君から聞き及んでおります。妖精をこの目でみるのは初めてです」
「あなたにも見えるのですね、妖精が。やはり九条家は昔から思念波を扱えたのですか」
「そうですね。歴史の表には出てきませんが、思念波は秘匿されております。あの里山は厄介でね『迷いの森』を
なんとか抑え込みたかったのですが、どうしようもできず立ち入り禁止にしてたのですよ。それを貴方が突然現れて入っていくもんだから、ずっと監視させて頂きました」
「京都市内に張り巡らしている自動運転用のガイドマーカーは、貴方が設計されたのですか? そのガイドマーカーから貴方に辿りついたのですが」
「いや、私は昆虫生態学が専門で、あれは本家の鉱物結晶学の専門の物が開発したものです。いずれ紹介しますよ。その者は貴方が開発しているAIアルフ・ライラと幻影に興味があるようですので」
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俺と九条慎太郎はそれぞれの本来の目的を語った。
俺は、時空位相がフィボナッチ数列順で連環して発生していたこと。
『賢者の叡智』と呼ばれる時空の神宝が存在すること。思念波が存在し、そのエネルギーで今世では魔法と呼ばれる技が使えること。
最終目的は、十夜族の十六夜、十五夜を救済すること。
九条慎太郎は、同じく思念波が存在することを理解し、昆虫生態学から昆虫世界では別の思念波も存在することを突き止めていた。
その研究から近々、昆虫世界において統一的な大きな事象が発生するらしいことを予言していた。人類に対して大きな災いを起こすらしい。
それを阻止するのが九条の目的である。
そのために互いに協力体制をとることになったのである。

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