時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第15話:集積疑似思念波 その1 (九条の研究成果)

 九条慎太郎はサバクトビバッタの群生化を研究している。

 サバクトビバッタは数億匹を一群体として群生化し、穀倉地帯を移動しながら全ての草本類を食べ尽くす。

 移動は世代交代をしながら、アフリカから西アジアを経由して中国まで及ぶ。

 有史以来、繰り返されていることであるが、近年に至っては更に十、百億匹規模の群生も発生し、

規模が極大化しているのである。

 彼らは、只やみくもに規模を拡大して草本類を食べ尽くしているだけなのだろうか、何か目的があるのだろうかと

 九条の疑問がこの群生化したサバクトビバッタの生態を研究し続けていたのである。

 そこで得られたひとつの解答があった。

 一匹のサバクトビバッタの寿命は3カ月であるが、一群体内では世代交代しながら食物補給状況が良ければ一群体内の総数は爆発的に増殖していく。その中で一匹だけ寿命が十年に及ぶ個体があり、この個体には特別な能力が備わっていた。

「九条殿、どうやってその個体が十年の寿命があると分かったですか?」

「本家の者が思念波を発信するガイドマーカーの研究、製作から、受信装置も作った。

 その受信装置が数億匹を一群体としたサバクトビバッタの統合された思念波、我々はそれを疑似思念波と呼ぶが、その思念波を受信した。思念波の中心の一点は十年間消えず、消えたらまた別の所にその点は移動した。

 我々はこれを三回キャッチしている。二度目の時にその中心の一点に居た特殊なサバクトビバッタに生体マーカを付けた。

 南アジアのパキスタンでだよ。三度目でそのバッタの死骸を確認し、群体は更に規模が拡大し五百億匹までになっており、現在三代目がインド東部まで来ている」

「疑似思念波か。未来世で俺も似たような経験したことがある。昆虫系の異質な思念波だがその発生源は生物学的には起源は同じ器官から発生している。頭頂眼(とうちょうがん)よ呼ばれ目の構成部に由来し、哺乳類の脳内の松果体と同じだ。故に異質だが感情は分かった」

「早神殿、そこまで御存じでしたか」

「ああ、それならこの蜂妖精女王の十三夜がその特殊なサバクトビバッタの疑似思念波を読み取ることができるかもしれない」

「是非、お願いしたい。群体内の微弱な疑似思念波はその一匹の特殊サバクトビバッタに集積されて、世代交代する度に大きくなっています。その集積疑似思念波は、ここ日本にある原始思念波のネットワークに影響を及ぼす程となっています。まだ大丈夫ですが数十代先では原始思念波ネットワークが波状するかもしれません。

ただ、我々の技術も更にに発展させれば打ち勝つことができるかもしれません」

「今世ではそのような事態になってたのか。彼らの目的は数を増やして集積疑似思念波を大きくすることだな。それと人類とはどういう関係が?」

「有史からの地球の覇権の掌握です」

「昆虫が?」

「そうです」

「既に、恐竜は脱落しました」

「恐竜は、巨大隕石落下による冬の時代で絶滅した説がほぼ確定事項だが?」

「違います。巨大隕石落下による淘汰はあったでしょうが、バッタ種の地球規模での全ての草本類の食いつくしで、他の大型動物が減少しそれにより恐竜も絶命したのです」

「聞いたことがな仮説だな」

「そこから、小型哺乳類が進化して今に至ってるのです」

「まあ、一仮説として聞いておくよ。それで三代目がインド東部ってさっき言ったよな。

インド遠いよ。遠すぎる。せめて中国ならまだ行ったことがあるし」

「今の三代目の群体は飛翔能力がずば抜けているようですぐに中国まで到達します。

同行して頂けますよね?」

「そうだな、その三代目の特殊サバクトビバッタの集積疑似思念波を見分する必要があるな」

「チュウゴクに行くのか? レイジ」

「ああ、久々の中国だ!」