時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第58話:地下迷宮へ再び その1

 AIアルフ・ライラがプラチナ甲虫スカラベの着地地点を示した場所は、ここから北西500メートル、森の端、つまり陸上自衛隊の祝園分屯地の影響下の場所であった。

 祝園分屯地は、前大戦においては東洋最大の弾薬庫として知られており、60年代に宇治駐屯地祝園分屯地として新設され、近年では中部方面後方支援隊隷下部隊として第303弾薬中隊が設置された。

「なぜ、そんなところに。わざとか? きっと自衛隊にも落下を捕捉されているな」

「はい、マスター、宇治駐屯地へ向かっていた偵察用ヘリがUターンして落下地点へ向かっているわ」とアバターのAIアルフ・ライラが告げた。

「レイジ、どうするか」

「放っておくさ、やつも時間稼ぎがしたいのだろう。葵がもうすぐ到着するはずだ、十三夜(つきみ)は葵と共に、

 地下7階のサーバ室へ行ってくれ。その部屋には、葵の持つIDカードが必要だ」

「ワカッタ。ワタシがいた時代よりもこの建物は崩壊せず真新しいね。もとはこんなキラキラした窓があったのか」

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通信士「こちらオスカー02。連絡を受けた座標に到達」

分屯地「周囲の様子はどうか」

通信士「直径20メートルの円形状に木々がなぎ倒されており、倒木が東へ伸びています」

分屯地「落下物体は確認できるか?」

通信士「いえ、何もありません」

分屯地「了解。地上からの探索部隊を向けている。周回待機してくれ」

通信士「了解」

「機長、おかいいですね。東へ伸びた倒木があそこで途切れてますが、そこには何もないです」

「そうだな、だとすると地中に潜ったか」

「あの巨体で、この短時間に地中に潜れるでしょうか?」

「後は、地上の探索部隊に任せるしかないな」

「最近、噂では別次元の新しいエネルギー波の利用の開発がここ京都で行われていると聞いていおりますが。それと何か関連あるのでしょうか?」

「ああ、それはおれも噂で聞いていが、深追いしない方がよい」

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「マスター、監視対象は、東に移動しています。戦前に構築された地下通路と同じ進路です」

AIアルフ・ライラは、現在のマップと戦前の祝園分屯地の地下に構築された爆薬庫のマップをオーバーラップさせて、説明した。

「地下7階のサーバ室へルートはここだけではなかったのか。あの巨体だとこの大型搬入入口しかないと予想したのだが。信士、俺らも急ぐぞサーバ室へ」

 地下7階まで行くには、セキュリティーチェックでIDカードを7回通さないといけない。

 この搬入口からサーバ室に到達するのに約10分かかる。間に合うのか。見誤ったのか……

「マスター、対象座標にドローンを飛ばしました。10メートル級の細い穴があります。低空から北進して初めて判別できます。追尾しますか?」

十三夜(つきみ)といい、おまえも単独行動か……。わかった追ってくれ。やつのサーバ室への到達予想時間は?」

「承知致しました。マスター! 何事もなければ約10分です。」

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 スコープグラスにAIアルフ・ライラがコントロールするドローンの映像情報、十三夜(つきみ)からの思念波による映像データが直接、脳内に展開される。さらに自分の視野からの映像情報の三つの位置の3D情報を理解し行動するのである。

 この時の精神状態は、ひとつの目的のみイメージしその他の思考はしないという野生の本能の状態である。

 ”地下7階サーバ室へ最速で到達しなければ”……