時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第75話:黒い雲の統率者との接触(前)

 当方から三筋の火炎が迫って来た。初撃はこの群体の中央に、遅れて周辺に到達した。

 これほどの火炎を受けたことはかつてないほどの威力を有していた。

 群体は霧散したかのように思えたが、また中央に集合しようとしていた。

 黒い雲の統率者は三筋の火炎の始点を探った。

「やつが、この地にも現れたのか。古来から聞き及んでいる一番やっかいな、第二十一代の令位守護者が。宿敵の紅のドラゴン。なぜに、甲虫王の子孫のプラチナ甲虫スカラベを従えているのだ」黒い雲の統率者は怒りに震えて言った。

 黒い雲の統率者は火炎に応戦して群体から羽切の振動波を三筋の火炎の始点へと放った。

 端からあたるとは思っておらずこれから戦闘を交える最初の挨拶のつもりである。

 黒い雲の群体の真下の山脈頂上付近の雲が切り裂けるの見えた、それからものの数分で、音速で飛行している、飛翔混成部隊に衝撃波が伝わってきた。

「黒い雲の統率者からの一撃だな。さすがにこの距離だと時間差がある。レフアル。あれはやつの攻撃か?お前と似たような攻撃だな」

「そうです。我々の多くは羽切で衝撃波を出します。やつらはそれを群体で衝撃波を出すので、威力が計り知れない程です。私の父も群体の前ではどうしようもなかったようです」

「昆虫族には毒の攻撃をするものもいるようだが?」

「そちらの……」

「ワタシのことかな? 蜂族はそうだな。 昆虫ではないが蛍胞子も神経毒ダナ。

 ソウダ、蛍胞子を増殖させてあの群体に蔓延させたら一網打尽ダナ」十三夜(つきみ)はレフアルを睨みつけて言った。レフアルは身震いしたかのように翅を震わせてようにみえた。

「それはいいアイデアだが、蛍胞子はここには3匹しかいない。それもレフアルの体の中だ。山城の地下迷宮にはそれこそ数百億匹はいるだろうが……」

「レイジ、やつらは山脈山頂、高度を下げているようだ。西側に陣取るつもりらしい」コックピットの中の十六夜(いざよい)が言った。

「まずいな、やつらもバカではないようだ。何か防衛策でもあるのか? まあこちらもまだ火炎の攻撃しか見せてないが。我々は、一旦山脈の東側に陣取るとするか」

「いえ、それだと膠着状態となりいつまでも戦闘が終わらなくなるでしょう。そう何十年もかかってしまうかもしれません」黄龍キトラが言った。

「では、何かいい案があるのか?」

 あいかわらず、羽切で衝撃波が飛翔混成部隊にぶつかり、音速の飛行の衝撃波が吸収し速度が一瞬遅くなった。

 黒い雲の統率者は山脈付近の群体からさらに中腹に位置を変えたようであった。

 十三夜(つきみ)とレフアルの感覚器官からの位置情報である。

「やつは、群体からいつも後方に陣取るようです。私が麒麟暴風で山脈一帯に広がっている群体を氷河もろとも、黒い雲の統率者へと押し流します。そこへ一気に上空から仕掛けて下さい」

「承知した。それではあの技をまた繰り出す時が来たということか」俺は伏見集落で放った天龍神の技を思い出しながら言った。

「デワ、ワタシがまたレイジの目となり黒い雲の統率者に誘導スルワ」十三夜(つきみ)が嬉しそうに言った。令時の役に立つことが一番うれしいのだ。

「ならば、今回我も手を貸そうかの。最後の一撃をこの漆黒の狼の黒爪で仕留めてあげるよ」十六夜(いざよい)が言った。

「皆の方々、お願いいたします。やつらは我らが東側の山脈に陣取ると予想しているはず。奇襲を掛けまする」黄龍キトラが言った。

 飛翔混成部隊は東側の山脈に陣取るそぶりを見せながら高度を一旦下げていった。