時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第77話:レアフルの聞き及んでいること

 レアフルは黄金のスカラベである甲虫王からいつも聞かされていることがあった。

 このアスカで発生した生命体の種族のなかで太古から連綿と続き、やがて知性を獲得し存続してきたのは、昆虫族、人族、恐竜族である。

 我々昆虫族は他族よりもはるか太古から存在しているが、知性を身につけたのはここ最近にすぎなかった。

 昆虫族の脳は弱小でその記憶細胞も少ないが膨大な個体の数によって、太古からの記憶を共有分散して記憶していた。

 最初はその記憶は理解されなかったが、特異時間点があった以降、甲虫の中からそれを統合理解する者が現れた。

 その者の系譜につながるのがで甲虫王である黄金のスカラベである。

 その特異時間点とは、今から10,946年前である。

 この年数は、人族の頂点に立つ令位守護者の発見による『フィボナッチの時空連環』数列の最初のゼロ年を示す。

 現在は第21数列目10,946,(1,1,2,3,5,..4181,6765,10946,...) なのであるから。

 その『フィボナッチの時空連環』を二十一代令位守護者である早神令時が断ち切ろうとした。

 その目論見は成功したかのように見えたが辛うじて甲虫王の子孫のレアフルの存在によりまだ断ち切れていなかった。

 『フィボナッチの時空連環』が断ち切られてしまうと、今後昆虫界のさらなる飛躍とこのアスカでの繁栄がなくなってしまうのではないかという怖れを抱いていた。

 人族とて同じはず、何故に二十一代令位守護者の早神令時はこれを断ち切ろうとする。

 そしてなぜ、アスカの地とは別系の十夜族が人族に肩入れする。

 十夜族の系譜は、昆虫界の共有記憶によると十万年以前はたどれず謎の存在となっている。

 その始祖は千夜一夜(アルフ・ライラ)であり、このアスカの地の者ではない別世界の者だ。

 しかも人形と昆虫やドラゴンにも変幻でき謎の存在だ。厄介な存在である。

 恐竜族の子孫の五色龍に至っては、我関せずの態度だ。彼らのテリトリーに入らない限り干渉してこない。

 なのに、いまここに黄龍のキトラがいる。

 わからないでもない、黄龍のキトラのテリトリーに黒い雲の群体の数千万の飛蝗が群がったのである。

 今は、共闘しているが果たして真の敵は何なのか?

 レアフルの思考はまとまらず、彼女は麓の黒い雲の統率者に攻撃目標を定めた。

「レアフル、マテ!」十三夜(つきみ)が疑似思念波を送った。

「ギギ、仇を討つよ。蜂妖精女王のお嬢さん」十三夜(つきみ)へ疑似思念波を送り返した。

疑似思念波には、"いくつかの疑問"が混じっていた。

 十三夜(つきみ)には昆虫族の共有記憶から生み出された、彼女の”いくつかの疑問”を理解することはできなかったが、刺し違えてもかまわないという信念が混じっていたのを理解した。

「ソコマデ、覚悟しているならシカタガナイ。援護してあげるよ」

 レアフルは、山脈から麓へと飛翔した。同時に十三夜(つきみ)が上空を旋回しその後を急降下で、追いかけた。

十三夜(つきみ)、加勢するなら、映像を共有してくれ。無理するなよ非常時は離脱しろ」

「ワカッタ、レイジ」