衝撃波の撃ち合いが収束したあとの湖面はもとの五色の色に戻っていた。
上空を旋回している十三夜からの遠隔視点の映像が俺の脳の中に直接入り混んで来ている。
今やそのオーバラップされた十三夜の映像から思念波を通じて観たい箇所を指示できるようになっている。
しかも自身の目から入った情報と同時に処理できるようになった。
以前のような3D酔は克服でき、もう一つの目に身体自在化を会得できた。
眼前には湖面から反射した紫の光があやしく霧に吸い込まれていた。
そのなかで、赤く光る点が重なる。十三夜の映像情報である。
ロゼアの魔石であろうことに間違いない。
過去にネームドの魔物を倒し魔石を採取しその秘められた属性を武器に付与してきたが、今、
魔石とはこの世界では鉱物の一種である無機質なものであるが、これは違っている。
生体魔石とでも言えば良いかもしれない。
「この赤い魔石は脈動しておるの」両手に取った
「このようない息づいている魔石は、私も初めて見ます! もしやこれは天珠願の魔石では?」覗き込んだレアフルが言った。
この場合、レアフルが言ったのは疑似思念波であるが、漢字という文字は便利なものである。
複雑な疑似思念波イメージをそのまま記号に変換できるのである。天珠願というのは俺の受け取った言語体系からの翻訳である。
「よくやりましたな。紅竜の早神令時殿。それは伝説の魔石で、我らもそれの名称は不確定だったが、そう天珠願の魔石でしっくりくるな。
その魔石を生み出せるのは友愛感情を有する生命体でしか生み出せないはずなのだが、それがなぜ、昆虫族であるロゼアがそのような感情を生み出せたのか。
この天珠願魔石は、死の最期に自身の信念を曲げ、相手の信念を受け入れ、さらにそれが成就することを希望するときに生まれる」いつのまにか、紅のドラゴンのそばまで飛翔してきた黄龍のキトラが言った。
龍族は基本的には他族には無関心だが知的好奇心はどの生命体よりも旺盛である。
「我らの伝承ではこのよう魔石は聞いたことがない」
知的好奇心なら黄龍のキトラには負けずとも劣らない
「なるほど、そういうことであればこの生体魔石、いや天珠願魔石はレアフルが所有すべきだな」俺はレアフルの疑似思念波に応答した。
レアフルは
多分この天珠願魔石は最後の日に役にたつだろうとこの場に居る者の全員が思った。
眼下に残された飛蝗の一群はすでに霧散し各々好きなところに分散したようである。
来た飛翔航路を今度逆に東へと偏西風に乗り海を越え、生まれ故郷の飛鳥へ向かう。
山頂に控えていた

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