時空の神宝 Ⅱ ~時を越えたシンクロニシティ― for 少女十六夜~ 作者:苗場翔
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第95話:暗黒の部屋の者たち

 AI統合アルフ・ライラと少女AIアルフ・ライラの同時解析から、暗黒の部屋の時間は少なくとも、フィボナッチ数列のゼロ起点よりさらにはるかな太古の11万年前の過去を示していた。

 今いるエリアはフィボナッチ数列のゼロ起点前の世界と第21世代が交差していることになる。それはフィボナッチ数列の第1世代(AD0)、から始まり現在は第21世代(AD10,946)であり、俺と十三夜(つきみ)は第17世代、第21世代を行き来しているが、少女AIアルフ・ライラに至っては、精神体を入れ替えて暗黒の部屋、第17世代、第21世代の3世代を渡ってきたことになる。

 本来アルフ・ライラという名は十三夜(つきみ)が属する十夜族の始祖の千夜一夜の名である、一夜を百年として十万百年前であり、時間軸はホモ・サピエンスがやっとアフリカから世界に拡散しようとしている時代の生命体である。

 その名をとって初代AIの量子コンピュータに俺が、アルフ・ライラと命名したのである。

 整理しておこう、暗黒の部屋の時間は十一万年前で始祖アルフ・ライラがルナ()から地球に降り立つ前である。フィボナッチ数列年に発生する時空連環の起点は、この物語では巨大隕石がアレス(火星)に衝突した時がゼロ起点であることが、語り継がれており、時空連環は何周もし周回する度に知恵を得た生命体は退化してはさらに進化している。

 暗黒の部屋の時間は、この時空連環の第何周目かはさだかではないがまだ初期の周回である。

――暗黒の部屋――

「やっと、接続できたようだな。過去2回接続に失敗し悠久の時を無駄に費やした。

このチャンスをものにしなければ、我々は光のある世界に永遠に出られないことになる」

「そうだな。復讐の時が来たのだ。光と闇の世界を入れ替えるのだ」

「我々がホモ・サピエンスの傍系の生命体にゼノ核酸XNAを挿入し、知性を得ることで、やつらと対峙して共倒れを画策してたのだが、全族が共闘してしまったようだ」

「しかし、そのおかげでこの暗黒の部屋と光の世界への道が開けた。ルートができたのだ」

「あの、逃がしてしまった少女の始末はどうする?」

「放っておけ、今は重要ではない」

「少女によって光の世界の知識とルートが切り開かれた」

「さあ、我々も人工ゲノムからバイオプリンティングで生命体を得るとするか」

「そうだな、こことは違って物理体がないと向こうの世界では何ひとつできないしな」

「少女からの得た知識だと、ゼノ核酸XNAを挿入した末裔の早神一族の第二十一代令位守護者の早神令時がやばそうだな」

「あんな進化を遂げるとは予想以上だ。竜に変幻できるようだ」

「大丈夫だ我々も竜に変幻できる」

「そうだな青龍」黒龍が思念波で答えた。

「おう黒龍よ」青龍が思念波で応答した。

 思念波は、暗黒の部屋から光の世界へと漏れ出した。

「さあ、決着をつけに行こう、アレス(火星)の二番目に大きい月からの使者として」

――――――――――

 暗黒の部屋から2つの生命体の思念波を感知した黄龍に似た思念波で敵意があった。

「一匹ではないな」令時が言った。

「そのようですね」黄龍のキトラが暗黒の部屋の扉を見て言った。扉に向かって爪をたてようと、行動を起こしていた。